株式会社とは?

2018/8/3
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金輝俊 / Hwi Jun KIM

株式会社とは利益をたたき出す装置である。では、利益を生み出せば何をしてもいいのであろうか?そして、会社は誰のものなのであろうか?

PLの一番上に売上、すなわちお客様がいる。反対に一番下には株主がいる。登場人物はほかにもいる。主な 人/組織は取引先と従業員、そして銀行である。上から順にお客様、取引先、従業員、銀行、株主となる。対応す る売上、利益などの数値データとして、売上高、粗利、営業利益、経常利益、最終利益がある。では、この登場 人物や利益の並び方は何か意味があるのであろうか?

株主の権限は強大である。しかし、PLの一番下にいるので、その権利である配当をもらう順位は他の登場人物 より低くなり、また、配当ゼロ円も場合によってはありうる。では、株主の権限とはなんであろうか?単純に言っ てしまえば、経営に口出しをできる権利である。株主として、取締役を選任したり、あるいは株主総会で発言でき る権限がある。取締役が複数いる場合は通常、取締役会が機関として設置され、会社の統治を行う。ちなみに、 取締役は会社と委任関係にあり、他の一般従業員、すなわち、雇用契約者とは違う存在である。

次に従業員を見てみよう。従業員は通常、給与をもらうが、この費用は粗利より下、営業利益より上となる。経 営に口を出せる権限はなくはないが、通常は取締役のような権限はない。ただし、室長や執行役員など特殊な職位はまた別途権限を有する。

では、会社が破たん寸前まで追い込まれたらどうなるのであろうか?最終利益まで到達するまで、仮に3000万 円必要だとしよう。しかし、当月の売り上げはゼロ円でかつ、もう純資産は500万しかない。500万円をキャッシュ で持っている。また、全従業員に給与を支払うには1000万円必要だと仮定する。また、業者には50万円支払う 必要があると仮定しよう。すると、まず、業者に対して50万円支払い、残った450万円から、従業員給与の一部 を支払う。株主の取り分である最終利益のいくらかはまったくない。正確には最終利益と関係のある、配当であ る。

このようにPLの上の方が支払いについて保護されるが、逆に下に行くほど、経営に口を出せる権限は強化され る。これを債権保護優先順位と経営権の関係性と仮に呼ぶ事としよう。

上場企業は社会の公器と呼ばれるがなぜであろうか?それはセカンダリーマーケットすなわち、上場市場で常 に見守られ、株式の売り買いができ、かつ、IR資料が公開されるからである。やろうと思えば東電のような超巨 大インフラ企業でも空売りをして、攻撃を加える事ができる。すると、上場企業はあまり社会的に考えて変な事 はできなくなる。少々極端な例であるが、これが上場企業は社会の公器であると呼ばれる所以であると思う。

では、上場企業以外はどうであろうか?株式会社は法的にではないが、主に次にあげるような分類方法がある と筆者は考える。1. ライフスタイル型一人株式会社、2. 通常の中小企業 3. 優良中小企業 4. 上場前ベンチャー企業 5. 大企業(上場、非上場を問わない)。次にそれぞれの内、一部の特性を列挙する。

1. ライフスタイル型一人株式会社 株式会社は実は一人でも作ることができる。会社勤めのサラリーパーソンだと週5日出勤して9-18時で出社す る。月額固定給与は守られているが、あまり自由は効かない。自分で株式会社を作って、自分がマジョリティー 投資家かつ、代表取締役だと、別にいつ働こうが、寝ていようが関係ない。ただし、収入は不安定となる。付け 加えると役員報酬は毎月固定と決めなければいけないので、会社としての売り上げの高低があろうが、自分の 役員報酬は一定値にならなければならないので、そこに制限が加わる。面白いのは会社として、経費が使え て、かつ、代表取締役として、給与所得者控除があるので、二重に経費が使えて、自分の額面給与で使える額 より多めの額を消費につかえて、金銭面で多少の優位性もある。では、収入を増やすために、そこまで働き詰に する必要はあるのだろうか?答えは否である場合もある。やろうと思えば、1000万円/年を狙えるが、わざと自分の役員報酬を500万円/年として、まったりめで働く事もできる。株式会社はたしかに利益をたたき出す装置で あるが、自分がマジョリティー株主であるから、そこは必要ないのである。人生いろいろ。

2. 優良中小企業 優良中小の優良たるゆえんはなんであろうか?例えばカフェを考えてみよう。そこそこの広さのカフェであれば、 多分3000万円くらいで作る事ができるだろう。では、まず銀行で5000万円くらい有利子負債で借りてきて、 3000万円でカフェを作り、残りをバッファーとしてとっておく。最初は毎月、利子のみ払い。カフェそのものの設計 としては、顧客一人あたり面積を増やし、単価も上げる。ただし、顧客回転率は下げる。そして、従業員の給与 は平均よりちょっと上げる。そして、営業利益率をトントンよりちょっと出るくらいにしよう。そうすると、数十年後に は元本は全部返せるであろう。経営者、お客様、従業員、銀行、全員満足。これが、中小優良の優良たるゆえん であると思う。

3. 上場前ベンチャー 新規産業、企業の育成。Googleもかつてはベンチャーでたった二人から始まった。Appleも同様。今、Google の検索エンジン、iPhone抜きでは暮らせない。ところが、ベンチャー企業は大半が失敗し、倒産していく。では、 大企業で新規事業育成はできるのであろうか?答えは否に近いと思っている。実際、上場目前の企業で新規事 業にトライした事があるが、インセンティブ設計にいびつさを感じた。具体的には既存部門は毎月表彰されていく が、われわれ新規組は新しく作っている最中なので、失敗も多く、そうは表彰されない。ところが、それと同じ チームでミドルステージにあるサービス開発にとりかかったところ、余裕で成功させ、三か月連続で表彰。売り上 げは二倍。営業利益も二倍ということになった。

やはり、新規産業育成は既存の企業では難しい。新規事業あるいは産業の育成のために、ベンチャーは必要 であると思う。加えて、あくまでも株式会社は有限責任である、潰しても構わないと思っている。つまるところ、企 業の新陳代謝(会社がつぶれた場合の社員は負の所得税で最低限以上の文化的生活はできると仮定してい る。負の所得税については別のドキュメントを参照の事)が必要だと思う。

事業構築のためには、シリーズAで1000万円。シリーズBで2億円から3億円。シリーズCで10億円くらい必要だ と今までの経験上、思っている。そして、その後の黒字化と上場を目指す。

株主はキャピタルゲインあるいはインカムゲインいずれかで儲ける。DCF的な発想で言えば、最終利益が出て いる時点でインカムゲインを出せてかつ、キャピタルゲインも出る可能性が高いから、別にロックアップがあろう となかろうと、上場後、すぐに株式を売る必要はない。むしろ、長期ホールドの方が儲かる可能性すらある。

経済は欲望が支配する。CSRなどのキレイごとでは社会は動かないと思う。あくまでも経済原理を使いつつ、そ の経済活動が収入的にも社会にとっても良い方向性に向かうように企業活動やBSやPLを設計する必要がある と思っている。結果、お客様がある意味の利得を得て、取引先が潤い、従業員が給与をもらい、株主が配当など をもらえればいいと思っている。

社会は人と会社、個人と法人によって構成されると考える。それぞれがギアのカムである。では、カムが腐った らどうなるのであろうか?産業の育成と勃興、そこに株式会社の倒産、負の所得税、ベンチャーによる事業育成 が加われば、新陳代謝が上手く行き、社会は回ると思っている。

株式会社とは利益をたたき出す装置である。では、利益を生み出せば何をしてもいいのであろうか?そして、会社は誰のものなのであろうか?私の答えはすでに上に記述した通りである。