2017/8/17
euler.bonjour@gmail.com / https://github.com/khj1977
金輝俊 / Hwi Jun KIM
大学院時代の研究の題目はスマートマテリアルシステムのための適応ロバスト制御理論の構築 とその証明だが、その目的はなんであろうか?なんのために研究をしていたのであろうか?
そもそも論の目的は大学入学時代から変わっておらず、プロロード選手がいかに長距離を疲れ ずに、かつ、高速に走るためのロードバイクを作るための研究にあった。ただし、これは一面的に 過ぎない。もう一つ目的は機械システムのエネルギー消費を抑えることにあった。
例を上げよう。例えば、スマートマテリアルシステムが実現されると、材料に対して電圧をかける 事によって変形させることが可能になる。その場合、なんらかの制御方法を適用する事によっ て、例えば材料の振動を制御する事が可能になるはずである。この物理モデリングと適応ロバス ト制御理論については大学院時代の研究提案書やいくつかの文章に書いてある。
- 研究提案書:Control Problems Arising on Smart Structural Systems (1.デジタルラグランジアンの提案 2. デジタルラグランジアンを使用したスマートマテリアルシステムの物理モデリングと制御問題の提案)
- Master of Philosophy論文についての解説
- Master of Philosophy論文、一部抜粋
この前提において、例えば、スマートマテリアルシステムが電車のボディに採用されたとすると、 かなりの軽量化がはかられ、かつ、振動を抑えることがきるかもしれない。-材料の特性により、 厳密ではないが仮に薄肉軽量化すると、簡単にベンドしやすくなり、振動も多くなる可能性が高 いと思われる-。軽量化がはかられた結果、運動エネルギーの消費が少なくなり、結果、電車を走 行するためのエネルギー、この場合はだいたいにおいて、電気消費量も減るはずである。
上記は荒い仮説ではあるが、応用例としては可能性があると判断した。もちろん、さらに高度な 応用例として、例えば、ジェットエンジンの噴出物そのものの制御やER流体を使ったアクティブサ スペンションそのものの制御も可能になる可能性もある。ただし、これは物理モデリングと数学 的、つまりシミュレーション上は可能かもしれないが、実際に可能かどうかは筆者にとっては不明 である。
古典力学の出発点はnewtonの運動方程式であるが、はたして、ニュートンはなんらかの工学的 応用や実業への応用とその先を考えて研究をしていたのであろうか?実際のところは不明だ が、ただ単に純粋に研究を楽しんでいて、結果として、newtonの運動方程式にたどり着いたのか もしれない。古典力学の先に各種応用分野の物理、例えば材料力学や流体力学があり、その応用例がなければ、現代の科学技術は存在せず、現代のような暮らしは送る事は不可能と断言し てもよいと思う。
はたして、科学技術者は常に社会的応用を考える必要があるのだろうか?あるいは趣味だけで 純粋に楽しんでいればいいのであろうか?筆者は両者のバランスだと考える。
筆者のMaster of Philosophy論文は適応ロバスト制御理論の構築とその証明であり、論文はほ とんど定理と証明で埋まっている。ほとんど数学の論文に近いと思われる可能性も高いと思う。 その出発は複数のassumptionからはじまっている。では、assumptionはどのように構築された のであろうか?答えを言えば、物理的妥当性に基づいて書かれている。この場合はスマートマテ リアルシステムの物理モデリングに基づいている。それは16ページの研究提案書に書いてある。 研究提案書のコアはdigital lagrangianにある。
digital lagrangianのそもそもの発想はlagrangianの空間領域における離散化にあるが、 lagrangian自体はいったい、なんなのか?newtonの運動方程式はlagrangianから導き出せる が、筆者はlagrangianの背後に何があるのかは理解してない。研究提案書を書いた時点ではあ る程度lagrangianの説明を読んだ記憶があるが、あくまでもlagrangianは所与のものとして扱っ ている。
もしかしたら、lagrangian自体も物理的考察あるいは、数学的考察、あるいはなんらかの実験結 果によるのかもしれない。筆者のMaster of Philosophy論文は複数のassumptionからはじまって いるが、その元はスマートマテリアルシステムの物理特性にあり、スマートマテリアルシステムの 物理モデリング自体はdigital lagrangeanを元にしている。そして、lagrangianはあくまでも、所与 のもの、つまり、全ての源として扱っている。
所与のものとは何か?